2012/03/31(土)13:06
間もなく街は新学期、早稲田も新入生があふれる時期が近づきました。
春は新入社員の季節でもあります。

私も39年前、早稲田を卒業し、社会人となった春を思いだすことがあります。

通勤時、地下鉄の改札口を出たところで、同期の仲間と顔を合わせると
口の重い私が話す前に、彼らのほうから話しかけてきます。

「いま、どこの部だっけ」
やがて時がたち、「なにかいい話ない」になり、

さらに時が流れたあと、「結婚した?」

そして、最後には、「どこに住んでるの」。

ある住所のときは、「いいところに住んでるな」。
引っ越して庶民的な住所に移ったときには、特に感想なし。

私が相手に問い返す前には会社に着いてしまう。

相手より先に口を開いて、聞き出すような性格ではなかった。

転んでもただでは起きない、何でも情報を得ようとする商社マンの世界。
のんびり屋で、商社に向いていなかった私であった。


10年前、商社を辞めて第二の人生を始めた早稲田の地で、
商店会の「新人」のときに、嬉しい「おじさんたち」に遇いました。

ひとりは、「昭和39年の東京オリンピックの年に大隈通りから南門通りに移ってきた」
が口癖の理髪店のHさん、いま80歳台半ば。

もうひとりは、やはり同じ商店会で和食店を営む70歳台のTさんです。

そして私も早や60歳を超えましたが、当時はみんな10歳ずつ若く、
もう少し元気だった。


私は、ちょうど理髪店を探していたので、Hさんの店を利用させてもらいました。

Hさんのお店では、普段はベテランの女性店員ふたりでやっていますが、
古くからのお得意さんや、お客が立て込んだときにはHさんもハサミを持ちます。

私もHさんに何回かやってもらったことがあります。
さすが手馴れてはいるのですが、髪の裾(すそ)を電気バリカンで梳くとき、
毛が引っ張られて痛かったけれど、遠慮して痛いと言えなかった。

Hさんは、ビールとカラオケが好きで、ひょうきんで、とても楽しいおじさんです。

一方、Tさんは、文字通り実直で古風な職人といった趣です。


私はまず、Hさんとお友達になり、Hさんと親しかったTさんともお付き合いが始まり、
3人でときどき飲み会にゆきました。

二人とも威張るようなひとではなく、私も長幼の敬意を払いはしましたが、
好きなことを言って、いつも楽しい会でした。


Hさんはカラオケでは演歌一筋で、マイクを離さないタイプでした。
五木ひろしの「細雪」を歌うときに、Hさんのお友達のMさんが加わると最高。
持参の手ぬぐいを使って、歌にあわせて爆笑の演技をしてくれるのです。

私も三浦浩一の「踊り子」を、Mさんに上手に演じてもらったときには、
笑いながら歌いました。実に演技を付けやすい歌詞だと思いました。

  さよならも言えず泣いている
  私の踊り子よ
  ああ 船が出る
 
Mさんは自分は歌わないで踊るのが好きな、とても有難い殊勝なお方です。


一方、Tさんはほとんど歌いませんが、いよいよとなると「別れの一本杉」を歌います。
Tさんの人柄にあった朴訥で誠実な歌唱で、本人は照れますが私は好きです。

私は二人の中間で、洋楽を含めて10曲ほどの中から歌います。
往年の映画の主題歌「慕情」は、若干、未完成ではありますが、好評です。


商店会の旅行で伊香保温泉に行ったときが至福の思い出。

食事が終わり、ホテル館内のスナックに行くと、客は添乗員を含む我ら4人だけ。
楽しい3人組が、ママさんを前に盛り上がり、みな得意のノドを披露しました。

男の本性(?)で、ママさんの「取り合い(!)」になりましたが、
私は、先輩をたて、某藩の藩主と同じ姓のHさんを「殿」と呼び、
ママとダンスできるように、「思い出のサンフランシスコ」を歌ったのでした。

そのママさんから私に、東京に遊びに来ると電話があったときには3人で大騒ぎ。
結局、ママさんの時間がなく、東京での再会はなりませんでしたが、
どこに行こうかと、人生の大先輩がワクワクしている姿は面白かった(失礼)。

Hさんは、5~6年前に、80歳の区切りで仕事を辞めた後も、
私たちとときどきおつき合いをしていましたが、商店会恒例の
Tさんの店での今年の新年食事会に、Hさんが初めて欠席。
最近はお見かけすることも少なくなりました。

商店会の長老、長年にわたり辛口ご意見番として、
またイタズラ小僧のようでもあり存在感のあったHさん。

何よりも私のよき友達であったHさん。
また一緒にビールを飲んで、その歌を聞きたいものです。

学生時代、Hさんの店に散髪に通っていた大学の職員が、
もう、とっくに定年で退職してゆくほどの歳月が流れてゆきました。


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プロフィール

早稲田大学南門前のオムライス店・3つのオレンジへの恋のオーナーブログです。元商社マン、母校の地で第二の人生をはじめました。

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