2013/06/28(金)13:58
「圧巻の演奏」とはこの日のことでした。

「炎のコバケン」小林研一郎さんと稲門グリークラブ(早稲田大学グリー
クラブOB)との共演。

6月23日、日曜日の昼下がり。
東京芸術劇場で行われた東西大学OB合唱連盟演奏会でのことです。

この日、稲門グリーが歌った曲は合唱組曲『水のいのち』。
「合唱をやっているひとでこの曲を知らなひとはいないだろう」
(宇野功芳氏)と云われる名曲です。


管弦楽曲、とくに交響曲が好きだった私は、「総合芸術」であるオペラ
まではなんとか辿り着いたのでしたが、声楽曲とはやや距離を置いて
いました。

私がこの曲の存在を知ったのは、的を射る鋭い音楽評論をする一方で、
自らも声楽曲指揮者として、ときにはブルックナーの交響曲まで指揮を
してしまう宇野功芳さんの影響でした。

私が、音楽の海への羅針盤として絶大な信頼を置いている宇野さんが、
クラシック音楽評論の著書、限られた紙数の本のなかで唯一人、日本人の
作曲家である高田三郎のこの声楽曲をとりあげ、絶賛していたからです。


第一曲の「雨」から「水たまり」、「川」、「海」そして終曲の「海よ」の
5曲からなる組曲「水のいのち」。



「・・・水のいのちが再び空に昇ってゆき、雨となり、川となって輪廻を
くりかえすことが暗示される。・・いまだかつて、音楽において大自然の
輪廻が、これほどスケール雄大にうたわれた例は決してあるまい。
『海よ』の中間部において、

  おお 海よ 絶え間ない始まりよ
  溢れるに見えて 溢れることはなく
  終わるかに見えて 終わることもなく
  億年の昔も今も そなたはいつも始まりだ

とうたわれるとき、聴く者は人智を超えた大自然の不思議さに圧倒
される。・・・・」

(カッコ内、引用は講談社現代新書 宇野功芳著「クラシックの名曲・名盤」より)



この日指揮をした小林研一郎氏は、真摯かつ情熱的、感動的な指揮姿が、
レナード・バーンスタインとともに、私の心を熱く震わせる稀有の指揮者です。
とくにマーラーの交響曲において・・・。


私がもっている『水のいのち』のCDは、作曲者である高田三郎が指揮する
「混声合唱版」ですが、この日の演奏はもちろん「男声合唱版」。


宇野先生は、30年以上にわたる合唱指揮研究の結果、究極の合唱は、
「すぐれた少年合唱とおなじく、人間の体臭を脱し、しかも器楽以上に人の
こころの情感を伝え得る、厳しく訓練された純粋、透明な女声合唱である」
との結論に達したとのことです。

宇野先生はまた、男声については、「・・どうしても人間の声というもの
から抜け出せない・・」と、その著書のなかで述べています。



しかして、「マエストロ小林」による作品の深い解析と卓越した指揮は、この日の
グリーOB男声合唱団と、大室晃子さんのピアノ伴奏によるこの曲にいのちを
吹き込み多様な表情をみせながら、最後は大きく波しぶきを上げる大海となった。

それは、まるでオーケストラ演奏でマーラーの交響曲を聴いているかのようでした。

たった一人で、マエストロと大合唱団を支えた大室さんのピアノは、ついにフィナ
ーレを迎え、力強く最後の一音を強打した!。



東京芸術劇場の大ホールは、大喝采、満場の拍手に包まれました。

小林氏と早稲田グリー現役とは、もう40年以上も共演の歴史があるそうですが、
OBとは今回が初めての共演だそうで、まさに一期一会、白熱の名演でした。



今回、第19回目を迎えた東西四大学演奏会は、慶応ワグネルを長年にわたって
指揮、指導され、私も「レコード芸術」誌の試聴欄などでそのお名前を目にして
きた、畑中良輔氏を追悼する会となりました。

当日のパンフレットに掲載された福永陽一郎氏の追悼文によれば、畑中氏も
また、「その指揮でうたう前と後とでは、うたった人間の人生が変わるような
指揮をする極わずかな存在の一人なのである」とありました・・・。


この日の素晴らしい演奏会に、お声をかけていただいた稲門グリークラブの
Oさんに、こころより感謝いたします。

なお、このOさんは「水のいのち」を、高田三郎、宇野功芳両氏の指揮でも
歌っている果報者なのであります。


(付記)
   
   この日の稲門グリークラブのメンバー総勢147名のうちには、私と
   同じ昭和48年卒が10名いました。
   
   その何人かは、グリーのメンバーで一昨年亡くなられた私の同級生Y君
   の結婚式の日に、Y君とともに見事な校歌を披露してくれた方でしょう。
   
   あらためて、この日、この舞台に立つことができかったY君の早すぎる
   死を悼みます。
 



検索フォーム

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
プロフィール

早稲田大学南門前のオムライス店・3つのオレンジへの恋のオーナーブログです。元商社マン、母校の地で第二の人生をはじめました。

リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム
QRコード

QR