2017/02/26(日)18:41
大谷康子さんの興奮冷めやらぬ中、ブルックナー「第7番」の美しい原始霧がかかってゆく。

早稲田の4年のときだったろうか、私は初めてブルックナーの世界に接しました。

モーツアルトやベートーヴェン、ショパンなど、音楽の代名詞のようになっている作曲家と比べると、アントン・ブルックナーは、名前からしていかめしく、近づきたいと思う名前ではありませんでした。しかし、LPレコードボックスにかけられたオビの、「後期ロマン派」という”文字“に惹かれ、大学の生協で買ったのが、マーラーの第1番「巨人」(バーンスタイン、NYフィル)と、ブルックナーの第4番「ロマンティック」の二枚組でした。

「ロマンティック」はブルーノ・ワルター指揮のコロンビア響で、飽きの来ない、聴けば聞くほどに好きな曲・作曲家となり、以来、ふと気が付くと、「ロマンティック」「5番」「7番」「8番など」の開始部分、アダージョやスケルツオ、フィナーレのメロディーが浮かんでくるのです。


以前、大谷康子さんが、オーケストラのコンサートマスターとしてよく出演されていた「題名のない音楽会」で、黛敏郎さんの追悼番組となったでしょうか、最晩年の黛さんが万感の思いで訪れたのが、ブルックナー所縁の「聖フローリアン教会」でした。

「ニーベルングの指環」初演に立ち会ったブルックナーが、ワーグナーの死を予感しながら作曲した交響曲第7番。

ブルックナーの「7番」は朝比奈隆さんの指揮で2回聴き、うち1回は「東京カテドラル教会ホール」で大いに期待しましたが、構造上からか反響音が気になって集中できませんでした。
一方、朝比奈さんが、北ドイツ放送交響楽団の来日公演で「ロマンティック」を振ったときには、会場のサントリーホールが、日本のオケでは聴いたことのない、くすんだ、ゴツゴツしてどっしりとした音で満たされた。野太いホルンが響きわたり、金管楽器が、オーケストラ全体が咆哮する。木管楽器が寂しげなメロディーを奏で、いよいよ「コーダ」が迫って来ると、終わらないでと願ったものでした。

朝比奈さんのブルックナー演奏を高く評価していた音楽評論家で、合唱指揮者の宇野功芳さん自ら指揮する 「ロマンティック」も、「池袋」で聴いたことがあります。「東京文化会館」での朝比奈さん・大フィルによるもう一つの「7番」と「8番」の名演奏は覚えているが、最高峰ともいわれる「5番」も朝比奈さんだったと思うし、未完の「9番」ともども、たいそう感銘を受けたはずなのに、記憶が薄れている自分にガッカリする。

レコードやCDでも数えきれないほど聴いてきたブルックナーの交響曲は、ワーグナーの名がついた「3番」以後、どれも差がつけられないほど好きだが、演奏頻度が少ない「6番」は、FM番組のオープニングに使用されていたフルトヴェングラーのアダージオ演奏を聴いた瞬間に胸を打たれました。

宇野さんは、フルトヴェングラーとカラヤンは(「音楽のつくり方」は正反対ですが)、それぞれブルックナーには向かないといい、私も同感です。情熱的なバーンスタインもブルックナーの世界とはちがうように思います。
しかしフルトヴェングラーと「6番」は相性がよいのか、この「アダージオ」の美しさは別格です。第二次大戦後の混乱に乗じて、ソ連軍に持ち去られていた多くの音源が発見され、蘇ったフルトヴェングラーとベルリンフィルの名演奏の、夢のようなシリーズ番組でした。解説は早稲田出身の評論家黒田恭一さんだったと思いました。

この日、寺岡清隆さん指揮の早稲田大学交響楽団の演奏は、最前列席で聴いていたので、弦楽器パートが、トレモロ、ピチカートの弱音から最強音にいたるまでしっかりと聴くことができました・・・オケのセンターから後方に配置されている管楽器や打楽器群などは、音が頭の上を通って行ったような気がする・・・。かつて「題名のない音楽会」で、黛敏郎さんが、コンサートホールで音響が最上の席はどの位置かというテーマを論じた。説得力のある黛さんのあの語り口がなつかしい。

さて、LPレコード2枚組だった長大なブルックナーの「7番」。しかも、「ワーグナー」の2曲に続き、まったくミスの許されない、大谷さんとの「ヴァイオリン協奏曲」を共演した後に・・・果たしてワセオケに余力が残っているだろうか・・・正直なところ心配だった。

聴くだけの、素人愛好家の私は専門的な論評はできませんが、それにしてもこの日の早稲田大学交響楽団のブルックナーもワーグナーも、そして大谷康子さんとのブルッフ!。
「凄い!」
この日、この言葉を何度口にしたことか。

クラシックの曲、とくに後期ロマン派の大曲は、聴く方だって気力体力が必要ですが、寺岡さんの明確でキビキビとした指揮の下、ワセオケの奏者たちは終始緊張感を失うことなく、実に見事な演奏だったと思います。練達のプロのオーケストラとはひと味もふた味も違うとは思いますが、与える感動は決して負けていません。

朝比奈さんの演奏を聴き終えた後、ほかの演奏会でも、この日ほど興奮し、心を揺さぶられたことがあっただろうか・・・確信がもてなくなりました。寺岡清隆さん・・・早稲田大学から音楽家を輩出する理由がわかったように思いました・・・そういえば朝比奈隆さんもたしか京都大学だった・・・。


(付記)
今回のタイトルは、私が勤めていた総合商社の社長の言葉「熱心なアマチュア(素人)は不熱心なプロ(玄人)にまさる」にヒントをいただいたものです。

日頃、楽器を持って「3つのオレンジへの恋」にやって来る「ワセオケ」や「ワセフィル」のメンバーたち。
ごく普通の早大生のように見えるのに、音大生でもないのに。
なんでこんなに!。

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早稲田大学南門前のオムライス店・3つのオレンジへの恋のオーナーブログです。元商社マン、母校の地で第二の人生をはじめました。

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