3つのオレンジへの恋の物語・・・オムライス屋さんのお話
「伝説」の誕生
2018/03/05(月)15:49
黒澤 明監督の映画作りの厳しさは、「伝説」として伝え聞いていました。
思い通りにならない天候に日数だけがいたずらに過ぎていったこと、大雨のシーンでは想像を絶する大量の水を使用してのド迫力、セットの背景や街並み・大道具から小道具に至るまで細部まで徹底的にこだわって、時間と予算は大きく膨らんでいったといいます。
「用心棒」は、それまでの時代劇映画では「無音」であった人が切られた瞬間に、初めて「劇画」のような効果音をとり入れたことで、三船敏郎さんの豪快な殺陣にいっそう凄みが加わったのです。
私が都立大学付属高校の2年生のとき、「記念祭(学園祭)」で、坂本龍馬の最後を描いた、石原慎太郎の「狼生きろ豚は死ね」という、氏らしい強烈なタイトルの作品をクラスで演じたことがありました。
担任であった日本史教師の黒羽清隆先生(後に静岡大学教授 1987年6月ご逝去)は、映画・演劇にも豊富な知識をお持ちで、「狼生きろ・・・」も、たしか先生の勧めによると思いました。
そのころの私はもっぱら洋画中心で見ていたので、黒沢作品については、“とても凄い“といわれていた「七人の侍」(昭和29年公開)の評判と、「用心棒」「椿三十郎」など、いくつかの題名を知っていただけ。名作「羅生門」は大むかしの映画に思えていたものです。
━━「七人の侍」といえば、私が小学校1年生のとき、「七人」の一人で、後にテレビドラマ「ザ・ガードマン」でも親しまれた名わき役 稲葉義男さんのお嬢さんが同級でした。ご自宅で拝見いたしたことがありましたが、まだ家庭にテレビのない時代のこと、幼い私には映画俳優という仕事も、黒沢作品に出演することがどんなに困難であり名誉であるのかも、わかりませんでした。
当然黒沢作品をご覧になっていた黒羽先生からは、演出や効果につき有益な助言をいただくことができました。
演出を担当した同級生の吉田君と清末君は、「狼生きろ・・・」の公演を終えたばかりであった劇団四季にアドバイスを求めに行くと、劇団側は上演の際の写真を渡してくれるなど、一見の高校生を相手に懇切丁寧に応対し、助言をしてくれたそうです。
かくして、クラスが一丸となって取り組んだ舞台「狼生きろ豚は死ね」は、惜しくも先年亡くなった龍馬役の山中 塁君をはじめ出演者の熱演と、スタッフ全員の力が結集し、目の肥えた先生方からも称賛をいただいた「歴史的名演」となったのでした━━つい中岡慎太郎役で出てしまった私━━サムライ姿で、うっかりメガネをかけたまま舞台上に現れるミスを犯してしまいしたが、何食わぬ顔で落ち着いて切り抜け!、都高18期C組のあの日の舞台は「伝説」としていまも語り継がれているのです。
黒澤映画ではないが、「3つのオレンジへの恋」の各種オムライスもクレームブリュレなどデザートも、こだわった材料に手間をかけ、こころを込めて作った作品です。
━━むかしむかし、新宿区の戸塚町というところに、「3つのオレンジへの恋」というお店がありました。
早稲田大学の正門近くにこじんまりと佇むマンションの1階で、まるで絵本の中に出てくるようなかわいらしいレストランでした。
そこには、なんにも料理はできないけれどなんだか優しいおじさんがいて━━おじさんはいつも文章を作ることに夢中になっていました━━明るく気っぷのよい奥さんが美味しいオムライスを作ってくれるのです。
お店のなかは、女子学生たちのにぎやかな声が絶えることがありません。
彼女たちが店のドアを開けて、一歩足を踏み入れた瞬間、期せずして「わー!いいにおい」。
オムライスがテーブルに運ばれると「美味しそう!」と、また歓声があがるのです。
ときには「美味しそうでございます」と。
そして、そこかしこの席で「美味しい!」「美味しいね」の合唱が始まるのでした。
「わだば日本のゴッホになる」
津軽が生んだ版画界の巨星 宗像志功の熱い思い。
たとえささやかではあっても、決して忘れられることはない。
「3つのオレンジへの恋」は、長い歴史を有する早稲田大学の伝説のひとつになりました。
(HPの記事で「3つのオレンジへの恋」“引退“を知り、悪天候にもかかわらず、高崎から二人の女子学生がかけつけてくれた日に━━)
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